天地明撮☆彡

〜かんじんなことは、目に見えないんだよ。心で見なくちゃ〜

初めての双眼鏡で星空観察(牛飼い座 M3と 髪座 Mel.111)

とりあえず手軽に星空に親しめたら、と思って、よい本を探していたら、「双眼鏡で星空ウォッチング」(白尾元理、丸善出版)という本が見つかったので、購入してみました。

パラパラと読んでみた感じでは、思っていたとおりの本で、大変良かったです。アマゾンの古本で購入したのですが、たぶん未読本ですね。良い買い物でした。

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さて、今日は雨なので、この数日の星空ウォッチングを書いておこうかなと思います。だいたい、午後10時から12時くらいに、気分転換で、気が向くとちょっと庭に出て、星を眺めているのですが、なにせビルの谷間なので、どうしても天頂付近がメインとなってしまいます。

今は、ちょうど牛飼い座のα星アルクトゥルス(私的にはアークトゥールス)が東の空から次第に高度を上げてきているので、星図でその付近をみると、M3球状星団があったので、これを見つけてみようと思ったのですが、これがなかなか見つかりません。

「双眼鏡で星空ウォッチング」と「メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド」を見ながら、双眼鏡で何日か付近を探してみると、面白いもので、だんだんと周囲の星の配置が頭に入ってきます。星図の星の配置を、星空に見つけられるようになると、とても楽しいです。

牛飼い座も古い星座で、フェニキアからギリシャに伝わったとか。フェニキアは、調べてみると現在のレバノンあたりの地域だったようです。3度にわたるポエニ戦争でローマを苦しめたカルタゴは、フェニキアの植民地でしたね。ローマ文学の最高峰、ウェルギリウスの『アエネーイス』では主人公のアエネーアースはカルタゴの女王ディードーと恋に落ちる場面があります。

実は、フェニキアは、古代ギリシャ語で Φοινίκη(ポイニーケー)と呼ばれたらしく、ポエニ戦争というのは、そこから来ていたんですね。

ポエニ戦争カルタゴがローマを苦しめていた頃、フェニキアはすでにアレクサンドロス大王マケドニア王国にのみこまれていたのですが、その歴史ははるか紀元前15世紀から同8世紀くらいまで続いたとのことで、航海技術に長け、カルタゴからイベリア半島まで、力をのばしていました。

そのためか、古代エジプトメソポタミアの影響か、天文知識の水準も高かったようで、それが、紀元前8世紀頃、古代ギリシャに伝わり、ホメロスやヘシオドスの作品に描かれている星座や星につながっていった、ということのようです。

 

さて、脱線しましたが、牛飼い座のイメージはこんな感じです。

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牛飼い座付近の星座(アプリ「iステラ」より)

牛飼い座の足元の明るい星が、アルクトゥルス(Arcturus)で、全天でシリウスカノープスに続いて3番目に明るい星なので、すぐに見つかります。

今回は、アルクトゥルスを起点に、M3球状星団を探してみました。

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Bootes_constellation_map.png: Torsten Brongerderivative work: Kxx, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

これはアプリ「星座表∞」の画面キャプチャに書き込みしたものですが、牛飼い座α星アルクトゥルスのすぐ近くには、牛飼い座η(エータ)星が見つかりますが、M3球状星団は、アルクトゥルスとη星を結ぶ線からおよそ60度ほどの角度の方向にあるようです。ただ、M3の近くに、あまり明るい星はありません。

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「双眼鏡で星座ウォッチング」には猟犬座α星とアルクトゥルスを結ぶ線のほぼ中間にあるという説明ですが、猟犬座α星はちょっと遠いので、アルクトゥルスから、牛飼い座12番星、9番星、3番星と辿ってみました。

双眼鏡で覗いた視野でいうと、アルクトゥルスと12番星がちょうどひとつの視野に収まる感じになります。双眼鏡の視野は、だいたい7度らしいので、それを目安に辿って行けそうな星を探すわけです。

12番星が見つかると、今度は12番星、9番星、3番星をひとつの視野に入れることができるでしょう。後は、9番星と3番星を結ぶ線から60度の方向に、ちょうど同じくらいの距離を目安に、M3を探します。

 

この本にも、9番星と3番星、M3が正三角形をつくる、と書いてありますので、その辺りを眺めていると、視等級6.22のヒッパルコス66725という暗めの星が見えてきますが、M3球状星団はそのすぐ左にあるはずです。

あ〜、あれかなぁ(笑)。M3球状星団は、6.39。都心部の光害の中では、私の双眼鏡8×42くらいでは、ぎりぎり見えるかどうかですが、ヒッパルコス66725は割と空の状態が良い時には確認できたので、見えてもおかしくはないですね。

といっても、心の目で見るというのに、かなり近い感じですが、暗い恒星の周りがちょっと滲んだ感じで、確認できました。やった〜!

いいんですよ。こんな感じで。でも、口径30cm、焦点距離2000mm以上の望遠鏡で覗いてみたら、どんな感じだろう、と思わなくもないですね。(泣笑)

 

というわけで、これがM3球状星団です。

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M3球状星団

HST / Fabian RRRR, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

M3は、シャルル・メシエが彗星に似た天体をカタログにまとめる契機となった天体とされています。(M1,M2はすでに発見されていた天体なので)

50万個の恒星を抱える大きな球状星団で、直径180光年、年齢80億年、地球からの距離は約3万3900光年です。ちなみに、太陽系の銀河中心からの距離が、2万5800光年で、球状星団の多くは、天の川銀河の渦から遠く離れた銀河ハローという部分に位置する天体です。

 

負け惜しみは言ってみたものの、やっぱり、ちょっと達成感が薄いので(笑)、近くの髪座(かみのけ座)の散開星団、Mel.111を探してみました。

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髪座(かみのけ座)付近の星座(アプリ「iステラ」より)

髪座(かみのけ座)はα星でも視等級4.3、星座の輪郭がはっきりしませんが、双眼鏡で付近を眺めると、控えめな輝きの星が無数に散りばめられていて、髪座(かみのけ座)とはうまい表現だなと思えます。

髪座(かみのけ座)は、ベレニケの髪(Coma Berenices)と呼ばれていて、エジプトの王妃ベレニケが、故あって自慢の美しい髪を神殿に供えたものを、その美しさに魅せられた大神ゼウスが星座にしてしまった、というのが謂われだそうです。星座の設定者は、ティコ・ブラーエです。

散開星団Mel.111は、見かけの大きさが275′(およそ4.6°)もある大きな散開星団で、ちょうど髪の毛の頭の部分全体がMel.111にあたります。

双眼鏡で眺めると、視野一杯に散開星団が広がって、とても美しいです。

髪座(かみのけ座)のα星、Β星、γ星は比較的に目立たない星ですが、周りも暗いので何となく見つかります。

散開星団Mel.111の範囲は、はっきりしませんが、髪座(かみのけ座)7、8、12、13、14、16、17、18、21、22番星はこの星団のメンバーとのこと。γ星、23番星は含まれないそうです。

星数30ということなので、それくらいの星は双眼鏡の視野に入ってきます。きれいですよ〜。

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No machine-readable author provided. RichardB assumed (based on copyright claims)., Public domain, via Wikimedia Commons

 

これは、アプリ「星座表∞」の画面キャプチャです。右上の明るい星が、髪座(かみのけ座)γ星です。

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散開星団 Mel.111(アプリ「星座表∞」より)

だいたいこんな感じに見えます。双眼鏡で見たイメージの方が透明感があって美しいですね。

散開星団 Mel.111は、星数30、直径22光年で、視等級2.7、地球からの距離260光年です。比較的に近い散開星団なので、大きく見えますよね〜。

ちなみに、髪座(かみのけ座)の方向は、天の川銀河の極にあたるので、銀河面の星や星間物質が少なく、宇宙の深淵部が見通せるエリアです。

こちらも口径20cm以上の望遠鏡なら、多数の銀河が群がった様子がわかるそうです。やっぱり、望遠鏡、欲しいかなぁ。

 

こちらは乙女座銀河団です。右上が散開星団 Mel.111ですね。

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乙女座銀河団(アプリ「星座表∞」より)

 

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ESA, NASA, Public domain, via Wikimedia Commons

 

これは、乙女座銀河団NASAの写真、中央右の明るいのがM86レンズ状銀河、その右端がM84。乙女座銀河団は、太陽系からの距離はおよそ6500万光年、1300から2000の銀河で構成されていて、天の川銀河が所属する局部銀河群は、この乙女座超銀河団の端の方に位置しているといいます。何ともスケールの大きな話です。

 

 

星の記憶

歳をとると、少年の頃のいろいろな記憶が走馬燈のように巡って、郷愁に駆られます。

私の場合は、宇宙に思いを馳せて、将来は天文台で働くんだと夢を膨らませた、天文少年だった頃の記憶ですね。

分からないなりに、ブルーバックスで相対線理論や素粒子論に触れ、ワインバーグの『宇宙創成 はじめの三分間』を読みふけったあの頃が、懐かしく思い出され、「そうだ!天体写真を撮ろう」と何故か思い立ちました。(笑)

昔は『天文ガイド』に載るような写真を自分が撮れるとは思ってもみなかったのですが、最近は、デジタルカメラの普及と、アマチュアでも大口径(25cm以上)の天体望遠鏡が何とか手に入るようになったようで、自分もやってみようかなと。

といっても、まだ仕事も忙しいし、遠征するのもあまり現実味がないので、星夜写真から始めようかなと思って、最近、カメラが良くなったらしい iphone を買い替えようかなと思ったのですが、見積もって見ると 20万弱となり、ちょっと考え中です。

とりあえず、天文知識もあやふやになっているので、お勉強から始めることにしました。最近、ギリシャ語を始めたので、ギリシャ神話もちょっと勉強してみようかなと思っています。

というわけで、こんな本を読んでみています。

今は、NASAをはじめとして、天体写真が無尽蔵にネットにアップされているので、わざわざ自分で撮らなくてもいいかなという感じですが、自分でレンズを向けてみると、リアリティがあるというか、少し宇宙との距離感が近くなるかなと。

といっても、ここは都心部なので、3等星がぎりぎり見えるかどうかです。とりあえず、もう少し星がみえるようにと思って、とあるYouTubeのチャンネル(※)で紹介されていた双眼鏡を手に入れました。

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さっそく覗いてみると、どうも「ひとみ径」がうまく眼に合わないなと、焦ったのですが、説明書をよく読むと、「繰り出し式目当て」と「視度調整リング」を取り違えていたようで、裸眼の場合は、繰り出し式目当てを引き出さないと、うまく焦点が合わないんですね〜。

幾晩か、星空を覗いていると、だんだん馴れてきて、うまく星像をとらえられるようになってきました。これで、6等星くらいまでは、何とか見られるようになりました。

試しに、iPhone 7 で、写真も撮ってみました。記念すべき、星夜写真1枚目。オリオンは、三ツ星があるし、1等星が2つ、2等星が5つなので、こんなに明るくても、星座のかたちがわかります。リゲルの方は隠れていますけど。

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初めての星夜写真

手持ちなので、プロキオンがだいぶブレていますが、こんなのでも、うれしいです。YouTubeで偶然オリオン座を通過して、銀河系外に飛び出していくビデオを見つけたので、イメージを重ねて、夢を膨らませています。

 

<Voyage to the center of the Virgo cluster>

太陽系から銀河系を飛び出しておとめ座銀河団まで行く仮想宇宙旅行の動画。M87に到達して終了する。途中で局所銀河群の銀河にも遭遇する。(原作は、カリフォルニア大学サンディエゴ校マイケル・ノーマン(Michael Norman)教授による)ー「天文学事典」(日本天文学会)HPより

 

星空に関心を持つようになると、いろいろ発見もあって、それも楽しいです。これは少し前ですが、アプリ「iステラ」の画面キャプチャです。ふとみると、天王星、太陽、金星、海王星、水星、木星土星がずら〜と並んでいました。内惑星は外合、外惑星は合に近いわけですが、実は、この時、火星は牡牛座にあって(天王星の左下すぐ)、太陽系の中で、地球だけがひとりぼっちだったんですよね〜。

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ちなみに、月も牡牛座。「ブルータスお前もか(Et tū, Brūte?)」です。(笑)

 

さて、この2日ほどは、双眼鏡で蟹座の散開星団プレセペを探してみました。ちょうど月齢18くらいで月がなく、風も強くまあまあ晴れていたので、どうかなと。蟹座は、双子座と獅子座の間の余り目立たない星座ですが、子犬座のα星プロキオンから辿ると、比較的簡単に見つかります。

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アプリ「iステラ」の画面キャプチャ

散開星団プレセペはM44というメシエ番号のふられた天体で、見かけの大きさが月や太陽の3倍もあります。私の双眼鏡の視野でいうと、だいたい7分の1くらいですかね。

下の星図は、iステラのキャプチャ画像と比べると、反時計回りに90度回転したイメージです。右下にプロキオン、右上に双子座のカストルポルックスが見えています。

プレセペは、この星図でいうと、ちょうど中心、γ星とδ星の中間辺り、すこし西より(右より)にあります。プレセペとは「かいば桶」の意で、北側のγ星と南側のδ星を2匹のロバと見なして、2匹が向かい合って、かいば桶の餌を食べているイメージです。

 

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File:Cancer constellation map.png - Wikimedia Commons

 

余談ですが、かいば桶をラテン語で調べると、praesaepe(プラエサエペ)が見つかりました。ちなみに praesaepiō(プラエサエピオー)は「前方に柵を巡らす」という動詞で、praesaepe には馬屋という意味もあるようです。

 

で、肝心の観測の方ですが、私は天文少年だったので、だいだいどんなイメージで見えるものか、経験的にわかっているので(笑)、「まあ、あれだな」という感じでした。

感覚的な話なのですが「あれだな」と「あれかな」はだいぶニュアンスが違うんですよね。都心部は、基本的に空が明るいし、多少は上層の雲がかかっていたりするので、クリアには見えないんだけど、確かにそこにあることは確認できるので、「あれだな」です。

「あれかな」というのは、視線の置き方で、見えたり見えなかったりするので、あまり確信が持てないときですね。「ビミョー」というやつです。それ自体、恒星ではない証拠みたいなものなので、そういう感じを楽しむ、というのもありでしょう。

ですので、始めての散開星団の観測としては、まずまずだったのではないかと思います。だいぶ、双眼鏡の扱いにも馴れてきましたし、当分はこれで楽しめそうです。

 

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プレセペ星団(M44)ーWikipediaより

プレセペ星団は、地球からの距離577光年、星数75(大望遠鏡では200以上)、年齢7.3億年くらいの比較的若い散開星団です。

 

<参考> 

 

(おまけ)

月も撮ってみました。iPhone7の標準のカメラは月を撮ると露光オーバーで、うまく撮れないのですが、アプリ「月撮りカメラさん」を入れてみたら、何とか撮れました。ちょっとズームし過ぎでぼけていますけど、感じだけ。

iPhone12だと、だいぶ綺麗に撮れるようなのですが、20万あると、そこそこの望遠鏡も買えそうなので、迷いますね〜。

 

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(※)

悲しい販売終了!ビクセンのコールマン8x32双眼鏡追悼レビュー Eng. Vixen Coleman 8x32 Binoculars Review - YouTube

Bosque(ボスケ)さん、いつも分かりやすい動画解説、ありがとうございます!