星に願いを

〜かんじんなことは、目に見えないんだよ。心で見なくちゃ〜

蛇遣い座 球状星団M10・M12・M14

蛇遣い座あたりから天の川銀河にかけて、次第に球状星団の数が増えていきますが、蛇遣い座には、7つのメシエ番号のついた球状星団があります。

ただ、うちの庭からはちょうど蛇遣い座の胴体付近のM10・M12・M14が視界に入るのみで、M10より南のものはビル影になって見えません。

その上、おそらく光害のために、M10も見えず、当然、もう少し見えにくいと思われるM12、M14も見えませんでした。あ〜。

実視等級はM10が6.6等、M12が6.1等、M14が7.6等で、恒星ならこれより少し暗い星も見えているので、やはり薄雲などが都心の光を散乱して、望遠鏡ではやや星雲状に見えるこれらの球状星団の姿をとらえにくくしているのでしょうね。

新製品 Comet Scan 15x70 投入!

相変わらず、望遠鏡はいろいろ勉強してみているものの、お値段も様々だし、何より自分の観測スタイルがハッキリしないので、なかなか購入にいたらず、ぐずぐずしていたところ、7月にサイトロン・ジャパンさんから15x70の双眼鏡 Comet Scan が 18,000円くらいという低価格帯?で発売されたので、ダメ元というか、とりあえず購入してみました。

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サイトロン・ジャパン Comet Scan 15x70

で、さっそくM10を探してみたのですが、今年は7月下旬になってからも、天候不順の日が多かったこともあって、最初の数回はやっぱりダメで、もう少し集光力が高くないと見えないのかな、とがっかりしていました。

これは、望遠鏡の買い時かなと思い始めていたのですが、世の中がお盆休みに入って来たためか、台風のためか、この数日ちょっと星空が澄んできたような気がして、「もう一度視てみよう」と再チャレンジ。週末、とうとうM10・M12・M14の観測ができました〜!

といっても、おそらく一般の方に視てもらっても、決して「見えた」とは言っていただけないような、「あれかな〜」のレベル。まさに心の目で見るという感じです。

でも、今はまだそれでもいいかなと。適切な観測機材があれば、見えることはわかっているわけですから。星空に親しみ、各々の天体についての知識を増やして、気楽に星空を空中散歩できるようになりたい、そんな感じです。

蛇遣い座

さて、蛇遣い座ですが、88星座中で11番目に大きい星座ということですが、目立った星が少ないのと、蛇座の頭部と尾部の挟まれているので、星座のかたちが少し掴みにくいです。

写真は、蛇遣い座付近の星図です。だいたい私は深夜の仕事の合間に星を眺めているのですが、これは5月頃ですね。今は、30度ほど時計回りに移動しています。

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蛇遣い座付近の星座(アプリ iステラより)

星座絵も蛇座と一体で描かれているので、さそり座と比べるとその大きさが分かりますよね。蛇遣い座と蛇座を合わせると、88星座中、断トツの1位となるのですが、特に蛇遣い座のちょうど将棋の駒のようなかたちの内側は、特徴のある星の並びを見出すのが難しいです。

この蛇遣い座ですが、アポロン神の子、医聖アスクレピオスの姿ということです。謂われをとくと、アスクレピオスは名医中の名医で、人一倍医術に取り組み、あまりに熱心過ぎて、とうとう死者までどんどん甦らせてしまうようになりました。

死者がやって来なくなったので、不審に思った冥土の神プルートーンは、アスクレピオスが死者を甦らせていることを知り、大神ゼウスに訴えます。ゼウスは死者まで甦らせるその医術におとどきつつも、天地の秩序を乱すことはならぬと、雷電の矢を放ち、アスクレピオスは息絶えてしまったのですが、その名医ぶりを惜しんだ神々はゼウスに願って、星空に上げもらった、というお話です。

で、何故蛇遣いなのか、というと、古代ギリシャでは蛇は健康のシンボルとして神聖なものとされていたのですね。蛇が脱皮を繰り返すようすを、再生と健康の象徴とみたわけです。

ちなみに、お隣の射手座は、アスクレピオスの養父ケイロンの姿ということで、天の川の対岸から、アスクレピオスを見守っているらしいですよ。

そう言えば、最近ギリシャ語の勉強していないので、ちょっと寄り道して。

ところで、Pluto(プルート)といえば冥王星ですが、「冥王星」という訳語をつけたのは野尻抱影さんなんですね。いや、もちろん知っていましたよ(笑)。でも、Plūtōnが冥界を司る神だと知ると、さすが名訳だな〜と思ってしまいます。

球状星団M10・M12

やっと今日の本題ですが、下の写真はその蛇遣い座の胴体部分です。M10、M12はちょうどその掴み所のない空間に浮かんでいるのですが、最初は、なかなかその位置を確認することができませんでした。

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蛇遣い座の胴体部分(アプリ星座表∞より)

もう少し、M10、M12の付近を拡大してみると次の写真のような感じです。アプリ「星座表∞」のキャプチャー画像をもとに、作図したものですが、球状星団の周辺には主だった星(ギリシャ文字がふられた星)はなく、比較的めだたない星が点在している様子がわかります。

一般的には、ζ(ゼータ)星と ε(イプシロン)星を底辺とする正三角形の頂点付近を探すと、比較的明るい球状星団M10、M12が3°の間隔で浮かんでいるのが見つかる、という説明になるようですが、最初に8x42の双眼鏡で探したときは、球状星団が見えなかったので、もう少し周辺の星を特定して、まず、どのあたりに目をこらせば良いのか(笑)、から始める必要がありました。

まずM10ですが、ζ(ゼータ)星から、蛇遣い座の胴体部分の底辺に対して垂直に、蛇遣い座の頭の方に視線をやると、比較的明るい蛇遣い座23番、30番の星が見えるので、とりあえず30番の近くにある暗い星(ヒッパルコス83166、図中の①)を確認し、30番星からその星の延長線上にM10を探します。

次にM12ですが、M10が見えていれば、そこからλ(ラムダ)星の方向3°(一般的な双眼鏡の視野角が7°)の付近を探せば良いのですが、私の場合は、周辺の星の配置からM12を探す必要があったので、まず、λ星の近くの、12番から21番までのW型の比較的暗めの星の並びを手がかりにしました。

W型の配置が確認できたら、21番星から何となく視線を移していくと、さらに暗めの星ですが、③④⑤の星の連なりをイメージします。M12は③④の線分を④を回転軸に60°ほど時計回りさせたあたりに見えるはずです。

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蛇遣い座M10、M12付近(アプリ星座表∞から作成)

下図は拡大図です。M10は図中の①②の間にあります。①は視等級7.49、②は視等級7.57です。M10の実視等級は6.6等ですが、これを恒星と比較すると2〜3等級低めに見えるので、①②のラインが見えていても、M10が見える可能性は微妙なんです。

暗めの星といっても、①は地球からの距離3749光年、②は393.44光年なのに対して、球状星団M10は1万5千光年も離れているので、M10の方は双眼鏡や低倍率の望遠鏡では星雲状にしかみえず、①②が確認できてもM10は見えないということも、あるわけですね。

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M10、M12付近のの拡大

M12はさらに見つけにくかったですね。③④を底辺とする正三角形の頂点付近にあるはずですが、コールマン8x42では、少なくとも眼視では見えませんでした。

さらに探索場所を特定するために、⑥⑦⑧の暗めの星の連なりを確認していきました。⑥はヒッパルコス81687で視等級6.25、⑦はヒッパルコス81942で視等級7.41、⑧はピッパルコス82114で視等級8.12です。

M12の実視等級は、6.1等ですが、これも、恒星と比較すると7〜9等くらいになるので、⑥⑦⑧が確認できても、M12が見えるかどうかも、微妙というところです。

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M12の探索エリアを確認

で、今回、サイトロン・ジャパンさんのComet Scan 15x70を導入して観測してみたわけですが、結果、M10・M12とも、何とか確認することができました。よかった〜。

コスパの良い双眼鏡だと思うのですが、実際、8x42で見えなかったM10・M12を、まがりなりにもですが、確認できて、ホッとしました。やはり、集光力というのは、大切なんだなと、改めに思いました。何となく、望遠鏡も口径優先で、反射望遠鏡がいいのかなと、思ってしまいますね。

 

そういえば、いつも望遠鏡などのレビューで勉強させていただいているボスケさんが、Comet Scan 15x70 のレビューをアップされていたので、視聴しました。EDレンズ(アポクロマートレンズ)ではないので、球面収差があるのは仕方がないけど、強いて言えばそれだけで、コスパも考慮すると「100点満点」というレビューでした〜。お安いとはいえ、18000円ですからね。安心しました! 

今回くらいの星空の状態だと、13等級くらいまでは見えている感じなので、これなら限界等級だけでいうと、15センチ程度の反射望遠鏡のスペックに近いですよね。 ホント、おすすめです。

 

球状星団M10は、直径83光年、地球からの距離1万4300光年。M12は、直径100光年、地球からの距離1万6000光年です。

この2つの球状星団、7x50の双眼鏡でみると同一視野に見える唯一のペアということですが、実際の宇宙空間でも、3700光年しか離れておらず、隣あった球状星団なんだそうですよ。

 

こちらが、球状星団M10です。大変密集した球状星団なので、口径30センチで倍率を150倍まで上げても、中心部を分解するのは難しいそうです。

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蛇遣い座・球状星団M10(Wikipediaより)

こちらは、球状星団M12。M10とは対象的に、密集度が低く、口径20センチで150倍くらいまで倍率を上げると、中心部まで分解できて、見事な眺めとなるそうです。

何だか、そう言われると、やはり大口径?(25センチくらい)の反射望遠鏡が欲しくなりますね〜。

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蛇遣い座・球状星団M12(Wikipediaより)

M10とM12、近傍にあって、明るさも同じくらいなのに、まったくタイプの違う球状星団なのが興味深いと、何かに書いてありました。

球状星団にも、いろいろな類型があるのでしょうね。この辺りのことをいろいろ調べていっても、楽しそうです。

 

Wikipediaの蛇遣い座周辺の星図も載せておきますね。ちょうど、中心辺りにM10、M12とそれからM14があって、このあたりに目立った星がないことがわかります。

画面左下が射手座、銀河中心方向で、星雲・星団がたくさんあるようですが、うちの庭からは見えないんですよね。残念。

そろそろ、どこか観測場所を探さないとダメかなぁ。

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蛇遣い座周辺の星図Wikipediaより)

球状星団M14

球状星団M14は、標準的な双眼鏡ではなかなか観測が難しい方でしょうね。20センチの反射望遠鏡で、好シーリングにめぐまれたら、150倍程度で、はじめて周辺の星を分離できるそうです。

まあ、しかしComet Scan 15x70でのぞくと、一応、存在は確認することができました。例によって、「あれかなぁ」という程度ですけど。

こういう見つけにくい天体には、自動導入システムが役に立つでしょうね。一度使ったらやめられない、という声も聞きますね。カーナビと似たところもあるでしょう。私も車はカーナビに頼りっぱなしですが、バイクツーリングではカーナビはあまり使いません。音楽もあまり聴かない。走ること自体を楽しんでいるからでしょうね。

地図をみて、いろいろ寄り道しながら、目的地を目指す。そういうところが、星見にもつながるところがあるように感じます。まだ、写真を撮ったりとか、特定の目的がないので、「効率」が関係ないからかも知れませんけど。

 

M10・M12からM14に移動する場合は、下の写真のような2箇所のポイントがあります。まず、蛇座の頭の部分のような正三角形が、ぽっかり浮かんでいるのを見つけます。15倍でも視野に収まっているので、割とコンパクトにまとまった三角形です。

そこから東(左)に目を移していくと縦に連なる星の並びがあるので、その方向に視線を移します。起点になる星は、少し暗めの星が2つ並んでいるので、それが目印になりますね。

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M10・M12からM14の見つけ方(星座表∞から作成)

縦連なりの星からさらに東(左)の方向に、下図のような暗めの星の配置が見つかれば、M14は③の星のすぐ左下あたりにあるはずです。これらの星は少し詳細な星図でも記載がありませんが、最近はスマホアプリの星図があるので、私はそれを活用しています。

③はヒッパルコス36232で、視等級7.43、距離243.41光年です。②は12.70等、①は12.22等、④は11.81、⑤は12.51、⑥は10.44です。M14の実視等級は7.6等なので、恒星に換算すると9〜11等くらいで、なかなか見えづらいです。

ちなみにM14の視直径は11′で、M10は20′、M12は16′なので、見かけ上の大きさからも、M14は見つけにくい球状星団といえます。

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球状星団M14付近の拡大

球状星団M14は、直径100光年、地球からの距離3万300光年です。M10、M12の2倍も遠い球状星団なのですね。

こちらが、球状星団M14です。タイプとしては、密集型のM10に近いそうです。

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蛇遣い座・球状星団M14(Wikipediaより)

(おまけ)

なかなか良い双眼鏡なのですが、やはり15倍なので、しっかり持っても微妙にぶれて、見えにくい天体がさらに見えにくくなる、ということはありそうです。

というわけで、次は180センチ程度の高さのある三脚と、微動雲台、あと双眼鏡を三脚の横出し出来る雲台プレートがほしいな〜と思いました。

あれ? 少し天文機材の知識がついてきたかな〜。 ボスケさん、ありがとう!